少女はポケットをいじると、そこから少女に似合わない黒い長財布を取出し、そこから札を一枚抜き取った。
「今日はわしが払うき、そこの店のあんちゃんに謝んなせぇ」
「うん」
セイジは安心したように笑うと、常磐に向き直る。
「ごめんなさい、おじちゃん」
「あぁ、気にすんな。駄菓子は安くて親しみやすいのが良いんだよ。万引きなんかしなくても、十分なんとかならァ。それから、おじちゃんじゃなくてとっつぁんな。何か傷つくから」
「うん!」
子供は素直だなぁ、と改めて思う常磐だった。
「今度は母ちゃんと来いよ」
「わかった!」
セイジは笑顔で駆けていく。
良い奴だな、俺。と、常磐は思う。
少女も満足したように立ち上がり、常磐に札を差し出した。
「なんぼ盗ったか知らんがの、これで足りるっしょ?」
それは普通駄菓子屋では出さないであろう万札だった。