少女は少年の手を優しく開かせながら、ゆっくりと尋ねた。
「名はなんと仰る?」
「………セイジ」
少年は悔しそうに、悲しそうに唇を噛みながら答えた。
少女は「そうか、セイジか」と言いながら頷き、再び口を開いた。
「ええか、セイジ。店のモンを勝手に持ってくるんは、万引き言うてな、立派な犯罪じゃき、逮捕されちまうでよ」
「……うん」
常磐は放置されているが、その前にこの少女の独特な喋り方が気になった。
「なして万引きなぞした?逮捕されっと、知ってたんだべ?」
「……穹人は……貧乏だから、こうして盗まないと…生きれないんだもん……母ちゃん…病気で寝込んでる…から、俺が、食べ物持って来ないと……」
ついに、セイジは泣きだしてしまった。
少女は優しくその小さな頭を撫でながら、無表情だが優しい声音で言った。
「わしゃ愛護の者じゃけぇ、犯罪者は逮捕せにゃいかん。セイジは未成年だべ?したらセイジの母ちゃんを逮捕するんじゃ。そんなん、やだべ?」
必死に頷くセイジ。