店が目前に迫り、卵のパックの角で穴が空いたビニール袋を持ちかえ、カノヤは少しだけカサッと音を立てながら、『駄菓子屋松金』の看板を見る。


その時だった。


「今ぶつかっただろ!?金払えよ!」

「え、あの…そんな、私……」


酒に酔って居るのか、中年の男が若い女性に絡んでいる。

女性は困ったように俯き、喚く男から逃れようとしていたが、男は女のようにヒステリックに叫び、道行く人の注目の的になっている。

それを見た常磐も例外ではなく、怠そうな顔の眉を少しだけ寄せて呟く。


「オイオイオイ…店の前で何やっちゃってんの、アレ。
オッサン酔っちゃってます?」

「どうすんですか、とっつぁん…」


普通は若い女性が困ってるときは真っ先に飛んでいくのが男のあるべき姿ではないか、とカノヤは若干思ったが、如何せん小心者のため、一歩を踏み出す勇気が無い。


怒鳴っている男は、人間だ。


恐らくあの女性は偽民で、適当にインネンを付けられたのだろう。


自分にも同じ経験があるので、わからなくも無いなとカノヤは思った。