帰宅する途中の出来事だった。


常磐とカノヤは重い荷物を手分けして持ちながら、グータラと文句を垂れながら歩いていた(もちろん常磐が)。

カノヤも調子に乗って買い過ぎたかと反省したが、冷蔵庫にある鈴カステラだけで生活するつもりはないので、今回だけは譲らないつもりだった。

実際、鈴カステラだけで何十年も生きられるだなんて、人間はそんな種族だったろうかと思う。

本当は常磐も、我々と同じ種族なのではないかと考えてしまうこともある。


「とき………とっつぁんは、何でとっつぁんって呼ばれたいんですか?」

「……え?いや……深い意味はないけど……昔からそう呼ばれてたからね、うん」


常磐は曖昧に答える。

再びカノヤは尋ねた。


「“ときわ”だから?」

「まぁ、そう。それにさ、なんかとっつぁんってカッコ良くね?なんか、偉い人って感じ?」

「……なんか、オヤジ臭くていやですけど」

「もう28にもなればオヤジカウントダウン始まっちゃうじゃん。それならさ、カッコ良いオヤジ希望」

「……28ΣΣΣ!!!?」

「そ。28。見えない?」

「いえ…てっきり、20代前半か、それくらいかと……」

「まだまだ俺も若いな」


何処か誇らしげに、常磐は言った。