夜、寝付けないリナは一人デッキに出た。


月明かりに照らされた夜の海は静かで冷たい風が頬に当たった。


家族のことを考える――
心配してるだろうか。


「リナ?」


突然後ろから声をかけられビクッと震えた


「バンリ…」


眠そうな顔で私の顔を見ている。
そして、そのまま隣に座った。


「どーした?」


ホームシックになってたなんて言えるわけもなく黙り込む


「眠れねーの?」


「うん。バンリも?」


「うん、まぁ」


バンリといると緊張する


綺麗な横顔に低い声
全部が完璧のような気がする


「なに、ジロジロみんなよ」


「ご、ごめッッ」


いたずらっぽく笑うバンリに顔が赤くなる
暗くて見えないだろうけど…


「俺、幼なじみがいるんだ。隣の家でいつもケイと3人で遊んでた。女なのに俺ら2人を一生懸命追いかけて…。街出るときも一緒にこようとしたんだ。でも置いてきた。リナ、おまえそいつに少し似てるよ」


そう言って少し切なそうに私を見るバンリに胸が締め付けられる。


「バンリ、その子のこと…」

言いかけたときバンリが立ち上がって手を差し出す


「もう寝るぞ、さみぃし」

「…うん」


バンリの手を握り立ち上がった。


「おやすみ」


優しく笑うバンリに私もおやすみと答えてベッドに戻った。