男性ホルモン剤を打ち、胸を手術で取り、僕はとても生きやすくなった。
人前で高い女声を晒すことはもうないし、胸を隠すために猫背にならなくていいし、何より見た目が男性化する。医学の力って凄い。
まあ、あえて注文をつけるとしたら、ついでに身長も伸びてくれればもっと良いんだけどね。
でも生きやすくなったけど、僕の体は「男」ではない。肝心な下半身に男性の主張がない。タオル持ち込み不可の温泉は入れないし、プールの更衣室ではタオルを巻いて着替え、立ちションだって出来ない。
僕に胸の手術をしてくれた先生が言っていた。
「この手術の目的は"男"になることじゃない。今の医療技術では完璧な男性になることは出来ないから。手術目的は、少しでも男に近付き、生活の質をあげること。」
全くもってその通りだ。