───目の前を、その人が通った───





あたしは思わず声をあげた。



「あの!!」



ピタリと止まる男性。ラフな格好をして、
今、あたし達が入ろうとしている劇場へと向かっていた。





「はい…?」





「あ、あのォ、あ……のそのっ」



「すみません、急いでるんで。」



その人は、劇場の中にいる、彼女と思われる人のもとへと向かった───