この塩商人こそ後の関羽である。この時、まだ彼は世に出ておらず、県令おかかえの塩商人であった。しかし…


「民の事など知った事か!そもそも、我が県では、塩や酒の類は全てわしの決めた値段で取引する事になっておる!」

「塩商人である貴様はその通りの値段で塩を売ればいいのだ!」

この時代、この様な事はままあった。悪化する財政の中で、塩や酒などを専売制にしたり、重い税をかけたりした。

しかし関羽は反論した。

「ですからそれがいけません。今は折りからの不況に加えて黄巾賊の横暴などにより民は苦しむばかり。少しはゆとりを与えてやりませんと。」

「黙れ!もはや貴様などいらぬ!この県には、貴様以外の塩商人などいくらでもおる故な!」

「下がれい!」

関羽は邸宅を後にした。