「郁人・・・」


「果穂? もっと自分を大切にして。
自分の人生なんだから、
思うように生きればいい。

俺たちだってこれが永遠の
別れとは限らないだろう?

やっぱり必要だった。
そうなるかもしれない。
だから今はじっくり考えて。

果穂が思うように・・・」


「郁人・・・
ありがとう・・・」





「まぁ、それまで俺が
一人でいるかはわからないけどな。」


「えっ!? ・・・だよね・・・
郁人ならすぐ見つかるだろうなぁ・・・」


「おいおい、真剣になるなよ!!」


「もう!!」


そう言って俺たちは、キスをした。



そう、恐らくこれが
果穂との最後のキスになるだろう・・・






そんなことをしてる間に、
電車が入って来た。


「電車が来た・・・」


「うん・・・」


果穂は寂しそうに俯いた。



「じゃあ、そろそろ行くな。」


「うん。 気をつけてね。」


「うん。果穂も元気で。」


「うん。 ありがとう。」


そして果穂は笑顔で見送ってくれた。


最後に果穂の笑顔が見れてよかった。




さよなら、果穂・・・


青森へ来てから一ヶ月が過ぎた。


毎日仕事に追われて、
休みの日も残った仕事を家でやる。
そんな日々が続いた。


そんなある日、オカンから電話があって
「青森に来く!!」と言い出した。


どうせろくに食事も
取ってないと思われたのだろう。


まさに、そのとおりだけど・・・



久々に手料理が食べられる。


それは、かなりうれしかった。



「はぁーっ、やっと終わった・・・
オカンはもう来てるだろうな。」


俺は家路を急いだ。


家の近くまで帰ってくると、
自分の家に明かりが灯っている。


それだけでいつもと違う。
なんだかうれしい気持ちになった。



「なんかいいなぁ~・・・」


俺はしばらく家の外から
明かりの点いた部屋を眺めていた。




ガチャ!!


「ただいま!!」


「あっ!! おかえりなさい!!」


「おう!!」


俺は靴を脱いで、
すぐにソファーに腰掛けた。


「はい、ビール!!」


「あっ、サンキュー!!」


俺はビールを開けて、
一気に半分を飲み干した。


「こっちは、めっちゃ寒いですね?」


「そうやろ? まだ11月やで?
やのにこの寒さ!!
なんで冬から来なあかんねん。
普通は春からやろ!?」


「そうですよねぇ~!!
普通は春ですよねぇ~。
あっ!? もうすぐご飯できますんで。」


「あっ、そうか。 わかった!!
じゃあ、着替えるか・・・って、

なんでおまえがここにおるねん!?」


台所には、高橋がエプロン姿で立っていた。


「えへっ!!」


高橋は悪戯に笑った。


「えへっ!! 
って、笑い事ちゃうやろ!!」


そこへオカンが帰ってきた。


「ただいま!! 
あら、郁人帰ってたの?」


「帰ってたのじゃないやろ!!
なんで高橋がいるねん!?」


「ああ、郁人の彼女って言うから・・・」


「はぁ!?」


「すごくいい子じゃない。
こんな子がいたなんて、
母さん全然知らなかった!!」









「いや、だから・・・」


「お母さん、この味どうですか?」


俺が話そうとする間に
高橋が割り込む。


「ああ、どれどれ?
んん、おいしい!!」


「ホントですか?」


「うん、麻衣ちゃん料理の素質あるわ。」


「やったぁ!!
お母さんに教わったからです。」


「また教えてあげるね。」


「ホントですか!?
是非お願いします!!」