制服もものすごく崩してる。
今は、私服だけどだらしなく着てるのがあたしでも分かる。
そんな恰好でも様になっちゃうんだから、相当零はかっこいいんだろうな。


ってこんな事思っちゃうことは別におかしいことじゃないよね?



「いってらっしゃいのちゅーは?」


ちょっと首をかしげて数十センチ下に下がったところから見上げる零。
あたしの胸に湧き上がる、この愛しいって気持ちは弟に対するもの…だよね?


「なーに言ってるの。いってらっしゃい」


新婚さんみたいだなぁなんて。
冗談もいいとこだよね。
でも、‘うん、いってきます’と笑顔で言う零を見たらそんな事を吹き飛んだ。


名残惜しそうに見えた背中はあたしの錯覚かさだかじゃないけど、くるっと踵を返してリビングに向かう。

うーん。


今日はほんとにいい日だった。


それもそのはず。

ずっと高校に入学してから、かっこいいなぁって思ってた昴くんから告白してきてくれたなんて。


夢みたいで、何回もほっぺたをつねってしまった。
そんな馬鹿なあたしの行動にも‘可愛いね’って微笑んでくれる昴くんは不良とは反対の人種。

不良を差別してる訳ではないけど、ってか零も不良だし。
普段カラフルな髪ばっか見てるせいか黒髪の爽やかな笑顔にドキンと来てしまうのはしょうがないと思う。

ジャニー〇事務所に入ってそうなその風貌のおかげか、昴くんはクラスのアイドル…なはずだけど、そうでもない。


何でかは知らないけど、みんなが昴くんに遠慮してる感じで。
近寄ろうとはしない。


学校での時間をほぼ一緒に過ごす梨花に聞いてもぱっとしない返事だし。
ま、別にそこまでして知りたいわけじゃないし、いいんだけど。


なんて思ってたらケータイがなった。
お気に入りのこの曲は、昴くん限定。


あたしは心が弾むのを抑えながら、平常心を装って電話に出た。