零が何にも言わないもんだから、あたしも限界を突破した。


「あんたらさぁ、いい加減にしなよ?何でシスコンがダメなのよ。ブラコンもダメなの?」


あたしも零を見習って前を向いたまま文句を言う。
残念ながら、さっきのような迫力はむなしいほどないけど、しょうがない。


「詩織。こいつらと話すな。いくぞ」



腕にしてる時計を見ながら、ドアノブに手を伸ばした零。
その姿はあたしより全然大人で…


何だかとっても悔しかった。



「じゃあな、詩織」


「また来いよ」


「バイバイ、詩織ちゃん」




そこにあったビールの缶を拾う。
3つもあるじゃん。
こいつらのかな?
全くゴミを置くなっつうの!


いろんな声が聞こえてきたけど、何も言わない。
これ以上話したくないって本音もちゃんとあるけど。
零との約束を守りたいだけ。




だから、後ろを向いてあたしにとって最上級の笑顔をお見舞いしてやった。



…顔面直撃缶ビール付きで。