「れ…い?」




分かんないはずがない。
忘れるはずがない。


この温もりは、零。



「零、零、れ…い」


さっきまで止めようとしてた涙がまた溢れ出した。
零の手があたしの方を抱いてる。
それだけの事であたしはとてつもない安心感を得る事が出来る。


「零だよ。もう大丈夫。何か変な事された?」



あたしはふるふると首を振った。


多分…されてないかな。
されたって言うか、されなくて怒ったって言うか…
ってこれじゃあ何かされたかったみたいじゃん。


ぷっと吹き出してしまった。


はぁ…と安心したような溜息があたしの耳元に当たった。


「ひゃあっ、もう!くすぐったいよー」


さっきまでの涙も忘れてケラケラ笑ってた。
零が来てくれてほんとによかったと思った。


「詩織ちゃんってば、俺らの事絶対忘れてる…」


昴が呆れたような声を出した。


「忘れたくない事なんてないし?どっちかっていうと早く忘れたい」

零の手から逃れたあたしはびしっと昴を指さして笑いながら言った。
それを見て、昴が肩をすくめる。



「詩織って…」


オレンジが呟いた。

「お前かぁ!呼び捨てにしたのは!」


さっきは喋ってるのに夢中で気づかなかったけど、呼び捨て事件の犯人はこいつだったんだ!