その笑い声に安心して、少し零の胸板を押した。
そしたら、‘あとちょっと’と小さい声が聞こえた。
あたしは子供みたいな零がおかしくて口元に笑みを浮かべながら、零の腰に手をまわした。
「大丈夫だよ。こんなので良ければ、いつでも歓迎だよ?いくらでも、どうぞ!」
笑うと、零の大きくて暖かい手があたしの頭を撫でてくれた。
その手が気持ちくて更に笑ってしまう。
ピロリ
携帯の着信がなると、零の手が止まってしまった。
それが何だか不安でそっと零の顔を見上げる。
とそこには何だか切なそうな顔の零がいた。
「零…?」
思わず呟くと、零が下を向いた。
そしていつもの笑顔で笑うとあたしの体をゆっくり放した。
「俺、もう行かなきゃ。もっと家でゆっくりしてたいのになぁ。グループの奴らが許してくんねぇの」
そういう零はちょっと拗ねてるみたいな素振りをするけど、本当はグループの人たちが大好きなのは誰よりも知ってるつもり。
「そんなこと言うと、悲しむよ?特に今日も誠也くん、‘零が詩織さんにべったりで話し合いに参加してくんないんです、詩織さんからも言ってやって下さい’って言われたんだからね!」
誠也くんとは、零の右腕的存在。
眼鏡の不良なんてめったにいないんだけど、黒髪で落ち着いた誠也くんはとっても策士。
喧嘩をなるべく荒事にしないように、片づけてくれるって零は嬉しそうに言ってたのを覚えてる。
「あー誠也はなぁ…あれだ!最近、俺よりもしっかりしてきて困ってんだよ」
今度はほんとに拗ねてるように言う。
それでも、大好きだと顔に出てるのが可愛い。
「じゃ、零はもっとしっかりしなきゃね!呼ばれたんでしょ?行かなきゃね」
あたしは零の背中を押すようにして、玄関に行った。