零に、たった一人の家族に睨まれるって堪えるの。


睨まないで、って言いたいのにあたしの体は全く言う事を聞かない。
それどころかますます震えだしてく。


「ごめっ…ごめ…ん。止めるっか…ら」


あたしには謝ることもままならない。


「ごめん。やりすぎた。ってか俺睨んでるのに気付かなかった」


そう言って零はあたしをぎゅっと抱きしめてくれた。
どくんどくん、と零の心臓が聞こえる。

あたしの体はさっきとは反対にどんどんおさまっていく。
零に抱きしめられるといつも落ち着ける。


「ううん…ちゃんと謝ってくれたし。あたしが涙脆いのが…」


「詩織のせいじゃねぇよ!ごめん…俺」


耳元で聞こえる声はとても頼りがなくて震えてた。
たった一人の家族に震えられるってのも嫌なんだよね?


「ごめん、零」

「詩織に謝れると、響く。謝んないで」


そう言って零はははっと笑った。