あたし…何かしたっけ?



あっ…



さっきの変な発言はなかったことにしよう。
例え、昴くんの返事がそれに対するものだったとしても…


あたしは、そう結論づけたのに昴くんは許してくれなかった。


「詩織ちゃんって面白いこと言うんだね…?あはは、俺こんなに笑ったの久し振りかも」


そう言って笑う昴くんの周りにはマンガだったら絶対花が咲いてるに違いない。

「あたし、面白いことなんて言ってませんよ?」


平静を装って笑う。
と、途端に昴くんはまた大声をあげて笑ってた。
昴くんってもっとこう…なんて言うか…ふっと笑うイメージだったからちょっとびっくり。

でも、その笑顔がとっても嬉しそうだったから。


「自覚してないってとこがいいねっ!…あっやばい、映画もう始まっちゃってる。早くいこ?」


昴くんがグイッとあたしの手を掴んで小走り気味に映画館に向かっていった。
周りの人からの視線が痛くて下を向いていたけど、それはきっとあたしに向けてじゃなくて昴くんに向けて。

昴くんがかっこいいから。


係りの人に言われたところに入っていくと、映画の予告の場面でぎりぎりその映画には間に合った。
ちょっとだけ、ちっとか舌打ちもされたけどそこは昴くん自慢の睨みを一発かますと大人しくなってくれた。