―愛、か。
愛なんて
永遠に答えの出ない問いかけを
しようとした矢先、
ずきずきとお腹の奥が痛んだ。
生理くるのかなぁって、
下腹部を押さえて考えた。
周期的には、
来てもおかしくない時期だった。
そうして、
自然と突っ伏す形になれば、
先生からは、
寝始めたみたいに見えたんだろう。
「平沢!」
大きな声で名前を呼ばれて、
あたしはゆるりと顔を上げた。
唇青くなってないかな?
って、不安になりながら、
そのまま立ち上がれば、
先生にも
顔色が悪く見えたのかもしれない。
「平沢?」
名前を呼ばれる声が
すこしだけ、柔らかくなる。
「おなか、痛いんです」
「…そう、じゃあ、望月。
一緒に保健室に行ってあげなさい」
先生の指名は、
タマちゃんだった。
たぶん、
タマちゃんは追い出したかったような、気がする。
でもタマちゃんは、
嫌な顔一つせず、
カバンを持って立ち上がって、
すこし血の気が引いてるだろう
あたしを見、
「…ちょっと、大丈夫?」
不安に、ひとみをゆらしてた。
「だいじょうぶ、たぶん、生理」
ぼそぼそとつぶやくように言えば、
タマちゃんはホッとしたように
頬をゆるめた。
「じゃあ、荷物もったげる」
ブルーのネイルが、
目の前で反射して光ってた。
スワロフスキーの、繊細な光。
タマちゃんみたいな、光だった。