「今古文かよー」
「だね」
教科書の中、
広がる未知の世界。
訳わからない言葉の
暗号のようなそれの
―羅列。
まわりくどく愛をとき、
まわりくどく女を褒め、
まわりくどく、
「…めんどくさいね、古文」
前の席で、
タマちゃんが息を吐く。
はああ、と聞こえたため息に、
あたしも同調した。
きっと、
こんな面倒な愛を語る時代に、
現代のこどもがいたら、
だーれも
愛なんて語らなかっただろう。
あたしだって
竜也だって
タマちゃんだって怪しい。
まぁ、
ニナちゃんなら語りかねないけど。
つくづく
現代って便利だなぁって
ポケットの中のケータイに思った。
だけど、
愛がなんなのか
よく解ってないあたしには、
その便利さは
ほんとうにいいことなのかも
いまいちピンとこなかった。