「遅い!もー…何してたの?」
「…え、ああ、髪の毛上手く巻けなくて」
次の日、
ドアを開けた先に居たのは、
タマちゃん。
今日も、
真っ黒なアイライン、
ブルーのカラコン、短いスカート。
タマちゃんが、
タマちゃんであるという、証。
ネイルは、相変わらずのブルー。
「…待ってるって知ってたらもっと早く降りたのに」
「悪いし、勝手に来たのあたしだから」
朝早くに出ていったパパ。
今日は帰りが遅いと、いい。
家の門にも鍵をかけて、
タマちゃんに向き直った。
「…ごめんね、昨日勝手に帰って」
「あたしはいいけど、ニナ、すごい気にしてたよ。
チョコに何があったのかあたしは知らないけど、あの子には悪気あった訳じゃないんだしさ、あとで謝りなよ?」
正論だった。
あの話が嫌なら、
嫌だって言えば良かったのに、
勝手に帰ったあたし。
きっと、
人のことに敏感な
ニナちゃんは、
あのあと泣きそうな顔で、
どうしよう、って
うつむいていたんだろう。
ぎゅ、と拳を作れば、
手首に鈍い痛みが走る。
それを無視して、
もう一度、あたしは、
「ごめんね」
と、そう口にした。