「長さは?どうする?」


「そうだな…少し肩に触れるくらい…ううん。もう少し短めのボブがいいかな。」


「え、そんなに切るの?」


「はい。なんだか、思いっきり変えたくて。」


そう言って笑うと、
楠本さんも「わかった。」と言って目尻を下げて笑った。


楠本さんは優しく優しく、私の髪に触れる。


耳元から聞こえる、
美容師ならではの手捌き。


私は自然に目を閉じていた。



今までの私は、
恋愛をすることで、
彼氏がいる。といことに、
何か誇りを持っていたのかもしれない。


そんなの、何も誇れるわけではなかったのに。


世の中は、恋愛が順調だと生活、もしくは人生が満たされていると思う傾向があるから。


…それも私の偏見かな?


だけど、楠本さんに会って気付いた。


人は都合の良い恋愛をすると幸せになるんじゃなくて、


本当に惹かれる人に恋をすることが幸せなんだということ。



楠本さんが、そう教えてくれた。


恋愛に、時間の経過なんて
関係ないんだ。