冷たい夜風が頬を撫でて、
それと同時にため息をついた。


「まだ…痛みますよね…?」


私は楠本さんの赤くなった頬を見て、そっと手を伸ばした。


「ん、大丈夫。」


楠本さんは微笑むと、
私の手を優しく握った。



結局私たちはお店を出ると、
雅樹は楠本さんを殴りにかかった。


楠本さんが避けたからまだ軽い傷ですんだけれど、
まともに当たったら大変な事態だったのは間違いない。


よろめき、ふらついた楠本さんの元に駆け寄ると、


「…もう…二度と来るな。帰ってくれ…」


必死で冷静を装う雅樹に胸が痛んだ。


そして最後に、


「…これ以上、菜々を傷つけたくないから…」


そう呟いた。


涙が出るよりも先に、
私たちはその場を後にした。