女の子たちの囁きが聞こえる。
何を言っているかはわからないけど、
半ば興奮状態なのがわかった。
微かに聞こえる。
「あの人誰?かっこよくない?」
次の瞬間。
私の肩をグイッと起こされた。
美紀の手じゃない。
もっと力強い。
それに、男性ものの香水の匂いがした。
顔を上げようとしたけれど、
その必要は無かった。
「菜々ちゃん。」
上げなくたって、わかってしまったから。
どうして?
どうして、ここに居るの?
「楠本…さん…?」
ゆっくりと見上げると、
「久しぶり。」
いつものように、
もしかしたらいつも以上に、
優しく微笑まれた。
そんな気がした。