そっと私の髪に触れる指先


それは優しくて、
本当に、優しくて、


あまりの心地よさに
目を閉じていた。


「菜々ちゃん…」


甘く響くその声に
酔い痴れてた……


でも現実は、



「菜々……」


切ない切ない、響きだった。











雅樹が目を覚ましたのと入れ替えに、
私は眠っていたらしい。


「ん…雅樹…」


私も虚ろな中で、そう答える。


雅樹は私の髪に指を通し、


「…俺たち…もうダメなのかな?」


そう悲しげに笑った。


「…えっ…」


何も言えない私は、
目を逸らせなかった。


雅樹は私を…
ううん、
私の心までもを見透かしているようだったから


何も言えなかった。



「…いつから…?」


雅樹の指先が止まる。


「いつから、あの人と会うようになってたんだ?」


それは、決して問い詰めたりはしない。


だけど…
その穏やかさが、何とも言えない深刻さを物語っていた。