「…菜々…。」
雅樹は言った。
「今夜、帰せない…」
初めて言われた言葉に、
体が、固まった。
吐く息も、忘れた。
「雅樹っ…」
顔を上げた瞬間、
唇を奪われていた。
決して優しくはない、強引な口付け。
漏れる吐息は、ため息にも似てた。
首筋を通る唇は、悲しみにも似てた。
確かめるように、私の肌に触れる指先は
いつもより無理矢理で、
「好きだよ…」
そう耳元で呟かれた言葉は、
私を束縛する、呪文のようだった。
抱かれる度に溢れる声は、
叫びにも似てた。
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