玄関に入るとき、 やっと手が離れた。 ほっとして、肩を撫で下ろす。 雅樹が立ち止まり、ぽつり呟いた。 「用事って…さっきの?」 「…えっ?」 「あの人と会うのが、用事? 俺さ、別にさっきの光景を見たくてあの場所に通ったんじゃないんだよ… タイミング…悪かったな…。」 「雅樹っ…」 何とも言えない、怒りにも悲しみにも似た表情で、私を見た。 そして…… 私を抱き締めた。