「ちょっと待って、菜々。」


振り返ると、
美紀が私の肩を掴んでいた。


私より背の低い美紀は、
私を見上げる。


その顔は、
決していつものような
可愛らしいものではなかった。


「話、ある。」


「え!ちょっと…」


私は言われるがままに
教室の外へと腕を掴まれ


前のめりになる形で
廊下へと出た。


「どうしたの、美紀。」


「どうしたの、じゃないよ!
菜々、最近雅樹くんに冷たいんじゃない?」


「…え?」


「雅樹くん、心配してたよ。
菜々に何かあった?て。
電話も出ないとき増えたし、
メールもそっけないって。」


雅樹が…そんなこと言ってたの?

「菜々、一体どうしたの?」


今度は心配そうな顔つきで
覗き込んできた。


「…美紀、私っ…」


「菜々?」


わからない。
わからないけど、涙が流れた。


この涙はどこへ向いてる?