「少し、歩こうか。」


バイトから終わって店を出ると、向かい側のガードレールに腰掛けていた楠本さんが私を見た。


そして、きょとんとした私に一言。


「少し、歩こうか。」


そう言った。


無意識に頷いていた私は、
愚かで、憎い。


もうわかり始めていた。


この頃から、


ううん。たぶん、違う。



出会ったときから、かもしれない。



彼に惹かれていたという事実は。