会場は駅前の練習スタジオの一室で、前を通ったことは何度かあったものの、足を踏み入れるのは初めてだった。スタジオの駐車場には既に十数人ほどの人だかりができていて、中には同じ高校で顔を見たことがある女子がちらほら集まっていたが、それ以外に知っている顔はない。おそらく高校生なのだろうが髪を明るく染めてミニスカートの裾からガーターを覗かせ、厚底の黒靴を履いた者や、制服のYシャツを第三ボタンほどまではだけて、大振りなシルバーのネックレスやピアスをしている者がいる。中には地べたにいわゆる「ウンチングスタイル」で喫煙している輩もおり、ジロジロ見ていたら因縁をつけられ根性焼きをお見舞いされたり、カツアゲされるのではないか…と蒼子は想像を逞しくして、視線を泳がせていた。