「シキ。寝たのか?」
「……寝てないよ。いい匂い」
甘ったるい匂いに誘われて目を開けると、
目の前に湯気のたつカップが差し出される。
「こぼすなよ」
子どもに言うみたいに、先生が笑う。
それが、いやじゃない。
「先生、動けない」
目だけで先生を見上げる。
嘘じゃなくて、本当に体に力が入らない。
「飲ませてよ」
先生は、形のいい眉をひょいと上げた。
切れ長の黒い瞳が、ちょっとだけ丸くなる。
「どういう風に?」
「先生の好きなように」
薄めの先生の唇が、にやりと笑う。
その唇が、カップに口をつけて、
「ん……」
あたしの唇に重なった。
するりと甘い液体が流れてくる。