俺の知らないきみが、たくさんいる。



まだしばらく、この黒猫には振り回されそうだ。



「星次さん、やきもち焼いた?」


「焼いたら困るか?」


「はは……。ドレスをくれたのは、そこで一緒に演奏する奴だよ。星次さん以外の男とは、寝てないから」



安心していいよ。


ベッドにうつぶせながら、かすれた声でシキが言う。



くたりと横たわるきみの背中が綺麗で、


俺は半身をおこし、薄暗い部屋に浮かぶ白い肌を、くすぐるように撫でた。



乱れた髪をすいてやったら、目をうるませた黒猫が俺を見る。




その横顔は、今日音楽室でピアノを弾いた浅倉を、どうしても俺に思い出させた。