恋人ができたのかと、同僚にからかわれはしたが、
隠しはしなかった。
弁当はありがたかったし、美味かったから。
いつも弁当は、愛情が感じられるようなものだった。
恋人と、呼んでもいいのだろうか。
予想外に尽くしてくれるシキに、俺はそんなことを思うようになっていた。
「いい匂いだな。今日はなん……」
リビングに入って、俺は言いかけた言葉を飲みこんだ。
シキが、見たことのない黒のミニドレスを着てキッチンに立っていた。
彼女は、服を2着しか持っていない。
下着も数着。
この部屋にいる時は、ほとんど俺の服を着てすごしていた。
シキのボストんタイプのブランドバッグには、着替えと化粧道具くらいしか入っていない。
携帯電話すら、持っていないのだ。