「じゃあ……なんて呼べばいいの? 先生の下の名前、教えてよ」
「……星次(せいじ)」
「え?」
「星次って呼べ」
星次……
安藤、星次。
「星次、さん……」
そっと、おそるおそる、
大切に味わうように、呼んでみた。
冷えた心に一瞬、あかりが灯ったような気がした。
「星次さん、星次さん……っ」
それ以外の言葉を忘れてしまったように、
あたしはあなたの名前だけをくり返した。
そのうちあなたが一層強く抱きしめてきて、
知らないうちに、あたしの目から涙がこぼれて頬とシーツを濡らしていた。
あなたはなにも言わず、なにも聞かず、
ただ深くむさぼるようにキスをしてくれた。