「先生、部活の顧問とかやってるの?」
「あ? ああ、クラシックの愛好会のな」
「先生にクラシックって、似合わないね」
「俺もそう思う。実際俺はクラシックなんて全然わからないしな。空いてる教師がいなかったから、頼まれただけだ」
「ふぅん……」
「それよりおまえ、先生ってのやめろ」
あたしにココアの入ったカップを差し出しながら、先生は言った。
それを受け取り、
少しだけ、心が痛んだ。
先生がココアをくれた。
そのことが、あたしにとっては特別なことなんだと、あなたは知らない。
知るはずもない。
それでよかった。
あたしだけの、大切なもの。
もう汚れてしまった、大切だったもの。