「ココア好きなのか? そりゃ助かった。大量に余って困ってたんだ。うちにある粉、全部飲みきってやってくれ」


「好きじゃないのに、そんなにあるの?」


「実家からよく送られてくるんだよ。ガキの頃、俺が好きだったらしくてな」



少し恥ずかしそうに言いながら、先生がココアの袋にはさみを入れた。



「冷たいのでいいよな」


「……ううん。あったかいのがいい」


「このくそ暑いのに? 変わってるな」



暑くても、寒くても、


あたしはココアはあったかいやつがいい。


あったかくないと意味がない。



ふと足元を見たら、テーブルの下にもプリントがあった。


『クラシック愛好会』と書かれてある。



クラシック、ね。


愛好会なんて、本当に嫌味な名前。