あなたが連れていってくれたのは、3階建てのアパートの2階。
1DKの、新しめだけど狭い部屋。
表札には、“安藤(あんどう)”と書かれていた。
どこかで聞いた名前。
どこで聞いたか思い出して、乾いた笑いがもれた。
「何か飲むか? ……って言っても、コーヒーとビールくらいしかないな。ああ、あとココアもあったか」
「ココア……?」
意外と片付いているリビングの床に座りながら、あたしは聞いた。
「先生、甘党なの?」
「いや、俺は甘いもんは全然……。なんで、教師をやってるとわかった?」
いぶかしげに聞き返してきたあなたに、あたしはあきれて、
目の前のテーブルの上に散乱してるものを、持ちあげた。