「……その気がないならいいよ。他の宿探すから」
わざとらしいくらい素っ気なく言って、あたしは体を離した。
餌をくれない相手に、猫は興味を持たない。
けど、ようやくあなたは迷いを消した。
「待て。他の宿って、別の男を探しに行くのか?」
あたしの手をつかんで、まじめな顔で聞いたあなた。
「そうだよ。宿なしの女を泊めてくれる、優しい男を探しに行くの」
「いつもそんなことをしてるのか……」
「まあ探さなくても、あたしモテるから。泊めてくれる人はたくさんいるけどね」
「……」
「軽蔑した? なら手を放して」
でも、あなたは手を放さなかった。
手が、痛いくらいだった。