「シキ……?」
あなたは眉を寄せて、あたしのつま先から頭の先までじっと見てきた。
「浅倉じゃないのか……?」
どこかほっとしたような声。
あなたのその呟きを聞いた時、
あたしの中で、なにかが壊れた。
いや、もうとっくに壊れていたのかもしれない。
「……決めた」
あたしは肩に回っていた手からするりと抜けて、
困惑しているあなたの腕に腕を絡めた。
「あたし今日、この人のとこ行くわ」
「おい、シキ?」
「そういうことだから、またね」
「マジかよ。……しょうがねーな。おい、シキ抜けるってよ! 行こーぜ!」
あたしを誘ってきた赤毛の男が、つまらなそうに仲間に声をかけた。