横に流すようにセットされた黒髪、
少し冷たそうな切れ長の瞳、
まっすぐに細く伸びた高い鼻梁。
広い肩に細身の体には、ブラックのタイトスーツがよく似合っていた。
人目をひく、整った容姿のその人を、あたしは知っていた。
こんな場所で、こんな風に再会するなんて。
見たことも、信じたこともない神様の存在を、
この時あたしは認めた。
「どうしたんだ、浅倉。なにかあったのか?」
“浅倉”とあなたがその名前を口にするたび、
あたしは泣きたい気持ちになった。
戸惑いながらも、信頼しているような目を向けてきたあなた。
あの時あたしがどれだけみじめな気持ちになったか、
きっとあなたにはわからない。
「おい、シキ。誰だこのオッサン」
あたしの肩に手を回していた男が、ちょっと不機嫌そうに言った。