「だろォ?……『混血』なんてよォ。あったまくるよなぁ」

「ホントだね……」

今の時代ハーフなんて珍しくないのだから。

(混血じゃなくてハーフって言えよぅ!!)

思わず力が入ってしまい、手の中でチケットがクシャっと音をたてた。

三歳の子供が『混血』の意味が分かってるとは思えないが、その言葉の中に潜む悪意はビーちゃんにも分かるのだろう。

「田舎のじじいとかばばあが言うんじゃねぇのか?今は『ハーフ』っていうちょっとオシャレな言い方があんのによぉ……」

「……そう」

(なんか理不尽だ……。そんな事でバカにされ、笑われるなんて)

玉置の掠れた声が余計に良子の感情を刺激した。

「よいしょ……」

走り寄ってきたビーちゃんが玉置の隣の椅子をギギーとずらしてよじ登る。

そして良子に無邪気な笑顔を向けた。

「ヨッちゃん、プール、いくの?いくのぉ?」

「あ、ううん。行かないと思うけど──」

「え~?なんで?たのしーよ。あッ、ビーちゃんいきたいなぁ」