「俺さ、西高の工業科に行ってて……」

「へ、へぇ……。すごいね」

良子はどうでもいい相槌を打ちながら、一方で記憶の糸を必死で手繰る。

(誰なんだ、この愚連隊はッ!)

まずは敵の正体を暴かなければ、勝ち目はない。

勝負とはそういうモノだ。

真っ赤にチラリと視線を走らす。

下品な赤髪を抜かせば、鼻筋はスッと通っている。

そして切れ長な瞳。

口端が僅かに上がっている。

一般的にそんなひどい部類ではない。

だけど――

(……ゴツい)

どこかから溢れる野性味。

「あ゙?『すごいね』ってヤンキー校で、すごいって事か?まさか、バカにしてんのか?」

(し、しまったぁー!!)

予期しない所に引っ掛かった真っ赤に、良子は焦る。

(まるで意味のない『すごいね』だって!……殺されるッ、もしくは殴られるぅ!)

そう良子が恐怖を感じる程に、目の前の男子はさっきまでの表情を一変させ、眉間にシワを寄せた。