案内された一番奥の四人席に座った良子は店をぐるりと見渡す。

玉置の家がインド料理店だったなんて小学生の時は知らなかった。

古びた感のあるこげ茶色の木製のテーブルや椅子、そして壁にはインド綿やカラフルな旗が貼り付けてあり、窓際には所狭しと象の置物が並ぶ。

(象ってタイじゃないのか……。インド象か。あっちの地方は基本象?)

良子は窓からの日差しを浴びてキラキラ光る派手な象たちに、何かあったらそのとんがった牙でアイツを刺しちゃってね?とお願いした。

「お茶でいいか?」

「は、はいッ」

玉置が両手一杯の本やらノートやらを良子の前のテーブルに置き、お茶を取りにまた席をはずす。

(う……こんなにあるのか。これ全部やるのか……)

やっぱりカツアゲされておけば良かったんじゃ?

良子がやる前からグロッキー気味になった時、背後で少し掠れたハスキーボイスが響いた。