「あの……弁償します。いえッ……弁償させて下さい」

さらば臨時収入。

さらば池波正太郎センセー。

修理代五千円越えたらどうしてくれようか。

しかし命には代えられない。

女も度胸だ。

(っていうか愛嬌のない私には度胸だ)

そんな暴走気味な良子に玉置は言った。

「そんなに言うなら……、勉強教えろ。金はいらねぇ」

答えは一つ。

「……はい」

(あぁ……私の夏、終わった)

大して夏休みに期待なんてしてなかったけれど、何も起こらないという事は平穏という事で。

(それって実はすごい貴重だったんじゃないの……?)

自転車破損の罪悪感も手伝って良子は玉置にこの夏を捧げる覚悟をした。