一度勢いに乗った自転車は、そのままの速度で灰色空を爽快に駆け抜けて行く。

十五分も経った頃だろうか。

明美が急に叫んだ。

「ねー、なんか楽しくなってきたぁー!」

「えぇ!?」

「楽しぃー!」

自転車を漕ぎながら、そう叫ぶ明美に良子は絶句した。

(……意外と大物)

想像を遥かに超えた大物だ。

今から超不良校と名高い西校に乗り込むというのに、『楽しー』と叫ぶ明美。

(頭おかしいんじゃ……?)

良子は明美の背中をマジマジと見つめてしまう。

実は良子はさっきから不安で不安で。

(トイレ行きたい気分なのに!)