振り込みを終えて、五千円弱の臨時収入にホクホクした良子は足取り軽く本屋へ向かう。

そして本屋の手前の角でいきなり黄色と灰色の頭に囲まれた。

(う?なんだ、なんだ?これは世に言うナンパか?)

高鳴る良子の胸。

(ついに来たか、私にもドキドキでワクワクでキュンキュンな夏がッ!)

もちろんこんな超下品なヤンキーとの恋愛は無理だが。

でもナンパされるのと断るのとではまるで別の次元の問題である。

ナンパされたという事実に意味があるのだ。

(結局は断るけど……高校最後の夏に人生初ナンパかぁ。私も捨てたもんじゃないじゃーん)

そんな良子に黄色と灰色はニッコリ笑う。

(キター!)

盛り上がる良子の目の前に、黄色の右手が差し出される。

「ん?……なに?」

「金だッ!金出せッ」

と黄色。

「おとなしく出せば何もしねぇ」

と灰色。