「だからって、ずっとあのままでなんていられないんだから……」

自分に言い聞かすように小さくそう呟くと良子は参考書と問題集をバッグにしまった。

ふと見るとバッグのポケットで携帯が緑色のランプを点滅させている。

(誰……?)

ポチポチとボタンを押して開いたメールは、登録している携帯小説サイトからのメルマガだった。

「なんだ」

実は玉置との勉強会がなくなってから、ほぼ毎晩のように『メガネ』は作品を更新させていて、三日前に完結したばかりだった。

『楽しいです』とか『頑張って下さい』とか『更新楽しみにしてます』とか顔の見えない人達の声援に後押しされて、『メガネ』は作品を投げ出さずにゴールを目指す事ができた。

長年の妄想癖のおかげで胸キュンネタに困る事はまるでなく、あれよあれよと言う間に書けた事も事実だが。

それでも『頑張って』と書かれた感想がなかったら完結出来なかったと、良子はそう実感していた。