リエに走り寄って『本当にこれがあのイカした渋木君なのかよ!!』と問いただしたい衝動をなんとか抑えて、良子は机でガシッと頭を抱えた。

「……妻夫木じゃないのか?」

(ああいうのはイケメン専用の登場シーンじゃないのかよぅ!!)

確かにリエは『イケメンだ』なんて言わなかったが。

(けどッ!!……ここはイケメンだろう!これが乙女の願いだろ!!)

「…………なぜ?」

ひいき目なしで玉置のがずっと格好いいのである。

そのヤンキー服といい、髪といい、全部玉置のがマシに見える。

良子はやるせない気持ちで手を繋いで歩く二人の後姿を見送った。

でもその二人の背中からは幸せビームが出ていて、良子はため息を一つついた。

「人は見かけじゃない……ってね」

(本当は分かってる)

この夏休みイヤと言うほどそれを思い知ったのは他ならぬ良子自身なのだから。