カラン……。

ガガンは今夜も多国籍。

微かな香水の匂い、それもセピア色のあの人達のモノだと思えばいい香りに感じる。

塾や教室や街角で同い年ぐらいの着飾った女の子からする香水の匂いは大ッ嫌いなのに、今日はいい香りだと感じるから不思議だ。

「アレ?ヨッチャン、イラッシャーイ。……バカムスコ?」

『病気でも バカムスコは バカムスコ』

そんな不届きな一句を胸に良子は頷いた。

「ニカイ、アガレヨー」

「いいんですか?」

「シヌラシイゾ~」

テレさんはそう言うとガハハハと笑った。

(似てる、この二人)

『アレハ シナン、シナン』とお客さんと笑っているテレさんの声を背に良子はドアをくぐり二階へ続く階段を昇った。