次の日、塾で先生が『今しっかり覚えてしまうんだ!!時間はいくらあっても足りないんだから』なんて熱く語る教室で良子の携帯がヴィーヴィーと震えた。

先生の視線を気にしながら携帯を盗み見る。

《熱出たやばい死ぬかもまじで》

(……玉置君)

「なんて読みづらいメールなんだ」

(っていうか、死なないだろ)

ぶっきらぼうな玉置のメールに突っ込む。

「リエちゃんのメールには絵文字を付けるくせによぅ──」

この句読点さえも省かれたメールに腹が立ち、ブチブチ文句を言ってしまう。

《死なないよ。お大事に。帰りに寄るよ》

良子は塾の机の中に携帯を隠して、見つかるんじゃないかとドキドキしながら、この一見素っ気無いメールを送った。

その『先生の目を盗んでメールを送る』という行為自体は、普通の高校生っぽいかも?と良子をちょこっと上気させた。