「か、夏期講習でッ!偶然にもリエちゃんが話してるの聞いちゃいました!って言うか、盗み聞き……して──」

虫の声だけがやけに響く。

「──だから、確かな情報なわけで……。残念だけど──」

いつまでも反応のない玉置が心配になって、良子は目を少しだけ開けて隣を盗み見る。

「……ア、ア、アハハハ……ハハハ……」

(わ、笑って……る?)

器用にも、顔は恐いが声は笑っている。

その顔がゆっくりと良子の方へ傾く。

「ひいッ!」

「アハハハ……ハハハ……。お前も笑えッ!」

「は、はいッ!アハハハハ……ハハハァ──」

眉間にシワを寄せて口角だけを奇妙に上げた般若みたいな玉置に怒鳴られ、良子も似たようなひきつった笑顔を作った。

「ハハハ……。はぁ……」

しかし良子はすぐに口角を下げてしまう。

(──だって)

「玉置君……。あの──」

(やっぱり笑えないよぅ……)

確かめるようにもう一度般若を見上げる良子。

ズビビッと鼻を啜る音が響いた。