ご機嫌な玉置の隣を歩く帰り道。

思い出すセピア色に背中を押されて、良子は決心をした。

(言おう。ずっと隠しておくなんて出来ないんだから……)

言わないといけない。

「玉置君?」

軽快なリズムに間違った歌詞で進む耳障りな『テントウ虫のサンバ』がやっと止まる。

(……もう結婚までいっちゃったんだね)

さらに言いづらい事この上ない。

「おぅ?」

「……あのぉ、リリ、リリリ……」

「おう。虫の声がいいな……。風流じゃね?」

耳を澄ませば、秋の虫がもう鳴いている。

(『風流』って?恋って玉置君にそんな言葉まで吐かせちゃうのぉ?)

恐るべし恋の力である。

「あー、夏休みも後半に突入だよなぁ……。今年の夏はヨッちゃん三昧だ」

「……なんかその表現ヤだ」

「なんでだよ?俺、結構楽しいけどな」

玉置はニヤッと良子を見下ろした。