「ブブッ!」

堪らなくなって良子は噴き出した。

こんな面白い話をまるで何事もなかったかの様に話す玉置がさらに可笑しかった。

(どこまでもズッコケヤンキーなんだな、玉置君って)

笑いながら、玉置の頭を見るとやぶ蚊が止まっている。

良子は迷わずパーンと玉置の真っ赤な頭を叩いた。

「あ!?」

眉間にシワを寄せた玉置が振り返る。

「……蚊。ホラ」

「あ、なんだ。そうか……」

本日の一句。

『今日はなぜか、恐くないぞ、ズッコケヤンキー』

(本当にいい兄貴だよ、このズッコケヤンキーは)

また真面目に保育園の園庭を覗く玉置を、良子は口元を緩めながら眺めていた。